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「金利が上がる前に買うべき?」——20代・30代の住宅購入、判断軸は金利より生活設計

日銀は2026年6月の金融政策決定会合で政策金利を1.00%に引き上げた。1995年以来、約31年ぶりの水準だ。住宅ローンの金利も上昇しており、これから家を買おうと考える20代・30代の中には「金利が上がる前に買うべきか」と焦りを感じる人もいるだろう。しかし住宅購入で本当に大切なのは、金利動向そのものではなく「家を買っても生活できるか」という視点だ。本稿では住宅ローン金利・不動産価格・家賃の推移データを整理し、金利上昇局面の住宅ローンで避けたいリスク、そして持ち家と賃貸を判断する軸を紹介する。

金利が上がる前に家を買うべき?住宅ローン金利・価格・家賃の推移データ

長らく続いたマイナス金利政策が解除されたのは2024年3月のこと。以後、政策金利は少しずつ引き上げられ、2026年6月の金融政策決定会合で1.00%となりました。1995年以来、約31年ぶりの水準です。今後も政策金利が引き上げられるかはわかりませんが、報道などではまだまだ段階的に引き上げられるという予想もあります。

政策金利が上昇すると、住宅ローンの金利も上昇します。住宅ローンの金利タイプには、大きく分けて変動金利と固定金利があります。市場の金利の動向によってローン返済中に金利が変わるのが変動金利、変わらないのが固定金利です。

2026年7月時点で、主な銀行の変動金利の住宅ローンの金利は0.9%〜1.1%程度になっています。マイナス金利政策時代は0.3%〜0.4%程度だったことを考えると、ずいぶん上昇しています。全期間固定金利の「フラット35」の金利も2026年7月には3.14%(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下の「最も多い金利」)。こちらも、マイナス金利政策が解除された2024年3月時点では1.96%でしたので、すでに1%以上も上昇しています。

金利だけでなく、住宅そのものの価格も上昇しています。不動産経済研究所のデータによると、東京23区の新築マンション平均価格は2023年度に1億円を突破。2025年度には1億3784万円と、2019年の約1.8倍にもなっています。

<新築マンション平均価格の推移(東京23区と首都圏平均)>

参照:不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向 2025年度」より(株)Money&You作成

同データの2025年度の首都圏平均で見ても9383万円と、1億円に届きそうな勢いです。東京23区が首都圏平均を大きく引き上げているのですが、近隣の県を見ても神奈川県7,481万円、千葉県6,828万円、埼玉県6,306万円などとなっており(いずれも2025年度)、年々上昇傾向にあります。

1億円ともなると、簡単に手を出せる金額ではありません。しかし、住宅ローン金利の上昇・不動産価格の上昇がこれからも続くという前提に立てば「将来さらに金利も価格も上がるなら、少しでも早く買った方が得なのでは」と思うのは自然でしょう。

家を買わないで賃貸にしようといっても、マンションの平均家賃も上昇しているのが現実です。物件の広さにもより少々異なりますが、2015年を100とした指数でみると、2026年4月時点では139.0〜158.0。家賃は2015年のおおよそ1.4倍〜1.6倍になっているといえます。

<マンション平均家賃指数の推移(2015年1月=100)>

参照:アットホーム「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2026 年 5 月)」より

物価が上昇するインフレ時代は、家を買う人だけでなく借りる人もその値上がりの影響を受けることになります。「購入と賃貸はどちらがお得?」とよくいわれますが、物件価格も賃料も上昇することを踏まえて考える必要があります。

家を買っても生活できる?住宅購入で本当に見るべき視点とは

住宅を購入する際、多くの人が住宅ローンの金利や返済額といった数字に注目します。しかし、大切なのは「家を買っても生活できるかどうか」を確認しておくことです。これは20代でも30代でも、それ以上の年代であっても変わりません。今の収入・支出・貯蓄の状況から、無理なく返済を続けられる借入額と返済期間を考えたうえで、住宅ローンを利用することが大切です。

20代・30代は就職・結婚・出産・子どもの教育など、さまざまなライフイベントが集中します。住宅ローンの返済が家計を圧迫し、他のライフイベントに振り向ける資金の余力がなくなってしまうのであれば本末転倒です。

金利上昇局面の中、家を「買うか買わないか」「いつ買うか」を判断する際に、金利動向に目がいきがちですが、金利動向よりも自分たちの生活設計を軸に考えることが大切です。

「銀行が◯◯万円まで貸してくれる」からといっても、上限いっぱい借りてしまえば返済は苦しくなってしまいます。「自分たちが無理なく返せる金額」がいくらかを考えて住宅ローンを借りるようにしましょう。

金利上昇局面の住宅ローンで避けたいリスクとは?頭金・返済負担率の注意点

金利が上がっている時期の住宅ローンには、特に注意したい落とし穴がいくつかあります。

●頭金を入れすぎて手元資金がなくなる

頭金は、住宅を購入するときに最初に支払うまとまった金額の自己資金のことです。「住宅価格−頭金=住宅ローンの金額」ですので、頭金が多いほど住宅ローンの借入額を減らせるうえ、金利負担も減らせます。

頭金は多いに越したことはありませんが、手元資金を使い切ってしまうと、病気やケガ、失業といった不測の事態に対応できなくなります。最低でも生活費の6か月分は万が一に備えた費用として残しておくようにしましょう。

●月々の返済額を背伸びしすぎる

年間のローン返済額が額面年収に占める割合を返済負担率といいます。住宅ローンの返済負担率の上限は、一般的に年収の30%〜35%に設定されています。ただし、これはあくまで「金融機関が貸してくれる金額の上限」。実際にこの金額で借りると家計に占める毎月の住宅ローンの割合が多くなり、生活に支障が出てきてしまう可能性が あります。

無理のない返済を考えると返済負担率は20〜25%以内に収めたいところです。この割合で借りられる金額を逆算したうえで住宅ローンを借りるようにしましょう。

●住宅ローン以外の資産形成が止まる

住宅ローンの返済で家計が圧迫されてしまうと、NISAやiDeCoなどの資産形成を続けることができなくなってしまい、子どもの教育費や老後資金などを貯められなくなってしまう可能性があります。住宅ローンの返済をしつつも資産形成もバランスよく続けられるのが理想。両方のバランスをとるためには、やはり無理のない住宅ローンを組むことが大切です。

●変動金利の「5年ルール」「125%ルール」にも注意

変動金利で住宅ローンを借りている場合、金利上昇によって返済額も上昇します。しかし、政策金利が上がってもすぐに毎月の返済額が増えるわけではありません。変動金利には、毎月の返済額が5年に1度しか見直されない「5年ルール」や、1回の見直しで返済額が前回の125%(1.25倍)までしか増えない「125%ルール」があるからです(なお、このルールが適用になるのは、「元利均等返済」で住宅ローンを借りた場合です)。

ただし、5年ルール・125%ルールは、毎月の支払いが抑えられるルールではあるのですが、元金の返済が先送りになるだけで、先送りになる分、支払い利息が増えることになります。最悪のケースでは、住宅ローンの最終返済日に返済ができていない元利金が残った場合、一括返済しなくてはならなくなります。

持ち家と賃貸、どちらが得?コストとメリット・デメリットを比較

では、家を購入せずに賃貸にしようと思う人もいると思いますが、持ち家にも賃貸にも、それぞれメリットとデメリットがあります。

<持ち家・賃貸のメリット・デメリット>

(株)Money&You作成

●持ち家のメリット・デメリット

持ち家の最大のメリットは、住宅ローンの返済が終われば住居費の負担が大きく減ることです。老後も家賃を支払うことなく住み続けられるので安心感があります。インフレで家賃が上がりやすい状況ではなおさらです。購入した持ち家は資産として残すこともできます。リフォームや間取りの変更なども自由にできますので、住まいに愛着を持ちやすいでしょう。

一方、仕事で転勤がある場合でも、簡単に住み替えることはできません。戸建てであれば固定資産税や修繕費、マンションであれば管理費・修繕積立金など、住み続ける限り継続的な費用がかかります。また、住宅ローンを完済したころには設備が古くなっていてリフォームが必要になる可能性もありますし、住んでいるエリア自体が衰退してしまうリスクもあります。

●賃貸のメリット・デメリット

賃貸は、ライフスタイルや家族構成の変化に応じて住み替えがしやすいのがメリット。住むにあたって住宅ローンを組む必要もなく、多額の頭金も不要です。物件が古くなったり、エリアが衰退してきたりしたら、新しい物件に住み替えればいいのも気軽です。

しかし、家賃を払い続けても資産にはならないため、老後も家賃を支払い続ける必要がありますし、2年ごとに更新料もかかります。高齢になってからの契約更新や入居審査が難しくなる場合もあります。

●持ち家と賃貸でコストはどう変わる?

では、金銭的な「コスト」という観点から持ち家と賃貸を見てみましょう。

30歳の夫婦が6000万円の新築(長期優良住宅)を購入した場合と、賃貸に住み続けた場合でコストはどう変わるのか、90歳まで生きる仮定で試算しました。

<持ち家と賃貸のコストの比較>

(株)Money&You作成

購入の場合、住宅ローンは年1%の変動金利とし、35年のローン返済期間中の金利が変わらない場合で試算しました。

賃貸の場合、子どもの成長にあわせて広い部屋に、子育てが終わって夫婦2人になるとコンパクトな部屋に住み替えることを想定しています。

金利条件や物件により試算結果は当然変わるので、あくまでも目安ですが、このケースで試算をすると、賃貸より購入のほうが出ていくお金は約171万円少なくなります。ただし、購入は頭金500万円がある前提なので、賃貸との差額の大部分は頭金の有無の差ととらえることもできます。ですから試算上はコストに大きな差はないと言えます。

ただし、変動金利は変動しない前提になっているので、今後金利が上昇するならば購入のほうがコストがかかる可能性は十分にあります。

以上を踏まえて、持ち家のほうがいいと考えられる人は、以下のような条件を満たす人です。

  • 購入した家にずっと住める
  • 頭金を用意できる
  • 今後の返済額増に対応できる

これらの条件が満たせない場合は、家を購入するかどうかは慎重に検討した方が良いでしょう。

「持ち家か賃貸か」は、どちらか一方が正解というものではありません。金利や不動産価格の上昇をきっかけに住まいについて考えることは良いと思いますが、それを「家を買う理由」にするのはおすすめしません。

家を買っても生活できるかどうか、そして今後の人生設計を総合的に考え、購入にするのか、賃貸にするのか考えていただけたらと思います。

参考情報:
金融庁|金融リテラシーの考え方
金融庁|NISA・iDeCo制度

執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー

(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍110冊、累計200万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

X(旧Twitter)→@takayamakazue

電気代だけでなく、インフレ時代の家計全体をどう守るか、あわせて考えてみましょう。

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