なぜマネーリテラシーが必要なのか?人生設計を支える「判断軸としてのお金の考え方」
将来のためにお金を考えようと思っても、「何から始めればいいのか分からない」と感じていないでしょうか。情報はあふれているのに、自分なりの基準が持てず、選択に迷う状態は多くの人に共通しています。
近年はインフレや制度の変化、金融サービスの多様化により、お金との向き合い方はより複雑になっています。18歳から契約が可能になるなど、個人の判断が求められる場面も増えています。
こうした環境で本質的な課題となるのは、知識量ではなく「判断軸の不在」です。本記事では、マネーリテラシーの基本を整理しながら、長期的な視点で自分の人生を設計するための考え方と、お金との向き合い方を体系的に捉え直します。
マネーリテラシーとは何か?なぜ判断軸として必要になるのか?
マネーリテラシーとは「経済的に自立し、より良い生活を送るために必要なお金に関する知識や判断力」のことです。「金融リテラシー」と呼ばれることもあります。
私たちは子どもの頃からお金と関わる生活をしています。おこづかいやお年玉をもらい、それを貯めたり使ったりしたことがある人は多いでしょう。大人になると、自分でお金を稼ぎ、そのお金で生活をするようになります。家族ができる、住宅や車を購入する、保険に入る、貯蓄や投資をするなど、さまざまな場面にお金が関わります。
このようなときにマネーリテラシーがないと、自分で選択ができなくなったり、間違った選択をしてしまったりするかもしれません。言われるがまま、勧められるがままにお金を使ってしまうとお金が貯められず、万が一のことがあった場合に家計が立ちいかなくなってしまう恐れがあります。これでは、将来やりたいと思ったことも実現できませんし、詐欺や多重債務のような金融トラブルにあう可能性も高まります。
マネーリテラシーを身につけていれば、お金を使う際に人に流されず、自分軸を持って選択ができるようになります。家計管理がしっかりできていれば、やりたいことも実現しやすくなりますし、万が一のときにも対応ができます。詐欺や多重債務に陥ることが絶対にないとまではいいませんが、マネーリテラシーがない人よりはその可能性は減らせるはずです。
つまり、マネーリテラシーを身につければ、経済的に自立して、よりよい暮らしを送れる可能性が高まるというわけです。
2022年4月、約140年ぶりとなる民法の改正をうけて、成人年齢(成年年齢)が20歳から18歳に引き下げられました。成人になれば、親の同意なく自分だけでさまざまな契約が可能。スマホの契約・クレジットカードの作成・住宅ローン・キャッシング・カードローンなどのローンも自分一人でできます。賃貸物件を借りたり、保険に入ったり、投資したりすることもできます。
しかし、いくら法律上は18歳から大人だといっても、適当に契約をすればトラブルの元です。そこで、成人年齢の引き下げと同じ2022年4月から、高校の家庭科の授業で金融教育が行われるようになっています。
マネーリテラシーは何を身につけるべきか?5つの行動で整理する
金融庁は、最低限身に付けるべきマネーリテラシーとして「家計管理」「生活設計」「金融と経済の基礎知識と、金融商品を選ぶスキル」「外部の知見の適切な活用」の4分野・15項目を掲げています。
ここでは、主なマネーリテラシーのポイントを「節約する」「貯める」「使う」「備える」「増やす」の5つの考え方に分けて紹介します。
●お金を節約する
マネーリテラシーを学ぶにあたって、まず身につけたいのが家計管理。基本的に収入の範囲内で家計をやりくりする必要があります。このところ、物価高で食費や日用品費、光熱費などの必要経費全般が高騰しています。きちんと家計を管理しないと、黒字にするのは難しくなってしまいます。
家計を黒字にするためにまず行いたいのが支出の確認です。毎月何にいくら使っているのかを洗い出してみましょう。といっても、1円単位で細かく家計簿をつけるのは大変です。大まかな支出の傾向がわかればいいので、1000円単位でざっくりと把握すればOKです。
買い物のレシートや領収書などを1か月分集め、「固定費」「食費・交際費」「その他」の3つに分けます。クレジットカードの明細やスマホ決済の購入履歴などがあるなら、それも同様に用意します。1か月分のレシート・領収書・クレジットカードの明細・スマホ決済の購入履歴などが用意できたら、合計すれば毎月の支出がわかります。
支出よりも収入が多ければひとまずは黒字ですが、赤字になっていることも多いでしょう。もし赤字ならば、節約することを考えましょう。
節約といってもさまざまな方法がありますが、まず固定費にメスを入れましょう。
固定費とは、毎月ほぼ一定額が必ず発生する支出のこと。住宅ローン・家賃・通信費(スマートフォン・インターネット)・生命保険料・電気やガスなどの光熱費、サブスク(サブスクリプションサービス)の料金などが挙げられます。
固定費は見直すのが面倒なので、つい放置してしまうケースが多いようです。しかし、一度見直してしまえば、その後継続的に節約効果を得られます。たとえば、スマホ代が月5000円下がったら、それだけで年6万円削減できるのですから、削減効果は大きいですね。同様に他の固定費も見直して、家計を黒字化していきましょう。
●お金を貯める
支出を見直して家計が黒字化したら、お金を貯めることを考えましょう。
今、まったくお金が貯まっていないのであれば、まず100 万円貯めることを目標にしましょう。100万円を貯めることができれば、「100万円貯められた!」という成功体験ができお金を貯めることが楽しくなるでしょう。できれば、いつまでに100万円を貯めるのか、期限を明確にすると、今からどれくらいの金額を貯めなくてはならないのかが明確になり、100万円を貯める現実味が増します。
100万円が貯まったら、次は生活費の6か月分を目指し、その次は1年分を目指しましょう。最低でも生活費の6ヶ月分は、預貯金で準備しておきたいところです。
お金を貯めるときには、「先取り貯蓄」を行います。先取り貯蓄は、1か月の手取り収入から一定額を先に取り分けて貯金し、残りのお金で生活する貯蓄の方法です。
計算式で書くと「収入−貯蓄=支出」です。先取り貯蓄をしておけば、残ったお金を仮に全部使ってしまっても貯蓄分は確保できているので、確実にお金が貯まります。手取り収入の2割程度を貯蓄できるのが理想です。
今の家計が、毎月の生活費を支払って残りのお金を貯める「後から貯蓄」になっていませんか?計算式が「収入−支出=貯蓄」だと、支出が多い月には貯蓄ができなくなってしまいます。
金融機関のサービスや会社の制度の中には、この先取り貯蓄が手間なく自動的に、強制的にできるものがあります。これらを利用すれば、普段から貯蓄のことを意識しなくても、自然とお金が貯まっていくようになります。
●お金を使う
お金を節約し、貯蓄に回す仕組みは大切です。とはいえ、お金は本来、人生を充実させるために使うものです。ですから、上手にお金を使うことも考えましょう。
お金を上手に節約して貯めている人は、お金の使い方も上手です。お金の貯まる人は、支出の価値基準を明確に持ち、メリハリをつけてお金を使います。支出の価値基準を持って、自分に価値があると判断したものやサービスには惜しみなくお金をかける一方で、いらないものはいらないと、はっきりしています。そして、何にどのくらいお金を使っていいのか予算を決めて、それ以上はお金をかけないようにします。支出に優先順位をつけて「どうしてもこれだけは」というところにはお金をかけてこだわってOKです。しかし、それ以外のところは安く済ませるなどして、メリハリをつけましょう。
お金を使うときには、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済といったキャッシュレス決済を活用しましょう。ポイント還元や割引などが受けられ、次回以降の買い物がお得になります。支出の記録も利用明細や利用履歴をみれば済むので簡単。現金では得られないメリットが満載です。
ただ、あれもこれもと使うと家計管理が面倒になってしまったり、ポイントも分散したりしてしまいます。自分の生活圏やライフスタイルを振り返って、よりお得に使えるものに絞って使うようにしましょう。
●万が一に備える
いつケガや病気で働けなくなったり、リストラにあったりして収入が急減したりするアクシデントが起こるかわかりません。こんなとき、上でもお伝えしたように生活費の6ヶ月分〜1年分程度のお金が貯められていればひとまずは生活できますし、ゆっくり休んだり新しい仕事を探したりと、次の一手を考えることができます。
しかし、貯蓄は一気に増やせません。お金がないときにこうした万が一のことがあったら困ってしまいます。それを防ぐために加入するのが民間の保険です。生命保険や損害保険などを利用すれば、必要なお金をすぐに用意できます。
ただ、なんでもかんでもすべて民間の保険でまかなおうとすると、多額の保険料が必要になってしまいます。何か問題が生じた際には、公的保険の年金保険、医療保険、雇用保険、介護保険などを利用して対処できないかをまず考えます。公的保険制度を利用してもなお、カバーできない部分で、生命保険や損害保険といった民間の保険を活用することを考えましょう。
●お金を増やす
お金を銀行預金に預けておいても、目減りする時代です。このところ銀行の預金金利は少し上昇してきましたが、それよりも早いスピードで物価が上昇しているインフレが起こっているからです。インフレに立ち向かうには、投資が欠かせません。毎月使う生活費などは普通預金などで確保したうえで、当面使う予定がない資金は、少額からでも株式、債券、投資信託といった金融商品に投資することも検討しましょう。
金融商品には安全性、収益性、流動性といった3つの特性があります。この3つの特性全てが優れている金融商品はないため、それぞれの特性をよく理解し、自分の資産やライフプラン、目的にあった金融商品を選ぶことが重要です。
投資をする際には、NISA・iDeCoといった非課税制度を優先的に活用しましょう。非課税の恩恵を受けられることに加えて、投資でお金を増やす基本である長期、積立、分散投資もできる制度ですので、中長期的に安定的にお金を増やせる可能性が高くなります。
NISAは投資で得られた利益(運用益・配当金・分配金)にかかる税金がゼロにできる制度。積立投資専用のつみたて投資枠と、一括投資もできる成長投資枠の2つの投資枠を利用して、一生涯にわたって投資ができます。
iDeCoは自分で出した掛金を自分で運用して、その成果を原則60歳以降に受け取る制度。NISA同様利益にかかる税金がゼロにできるうえ、毎年の掛金が全額所得控除できるので、所得税や住民税を節税することにもつながります。
以上、マネーリテラシーを向上させるために身につけたい力について解説をしてきました。
マネーリテラシーを身につけ、家計管理ができるようになれば、自分で計画を立ててお金を準備して使うことができるようになるので、やりたいことを実現しやすくなります。もしものときにも備えがあるので困った事態になることは減らせるはずです。トラブルに遭うリスクも減りますし、よりよい暮らしが実現します。
これからも、新たな金融商品や金融サービスが出てきたり、よりお得に使えるものが出てきたりと、情報が更新されていきます。マネーリテラシーは「一度身につけたら終わり」ではありません。ぜひ今後も学び、生活に役立てていきましょう。
▶ 判断軸を“使える状態”にする
1️⃣ その支出・投資はどの役割か?(節約・貯蓄・投資の整理)
→ 資産の分散について考えよう
2️⃣ その選択は将来のどの不安に備えているか?(備える・守るの視点)
→ NISAだけで大丈夫?
3️⃣ そのお金は時間とともにどう変化するか?(インフレ・長期視点)
→ iDeCoと不動産投資で将来に備える
参考情報:
・金融庁|金融リテラシーの考え方
・政府広報|成年年齢引き下げについて
・厚生労働省|社会保障制度の概要
・金融庁|NISA・iDeCo制度
執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計190万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。
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