
2025年夏のボーナスは増える? 支給額予測と賢い使い方
6月下旬から7月上旬にかけて支給される夏のボーナス(賞与)がいくらになるか、気になってそわそわしている人も多いでしょう。ボーナスはたくさんもらえたらうれしいものですが、2025年のボーナスには米トランプ大統領の「トランプ関税」による暗雲が立ちこめているのも事実です。
今回は、2025年のボーナスの展望と、ボーナスがもらえた場合の使い方のNG行動を紹介します。
2025年夏のボーナスは増えそう?減りそう?
毎月の給与とは別に支払われるボーナス。日本では夏と冬の年2回支払われるのが一般的です。ただ、「ボーナスを◯月に支払わなければならない」といった法律はありません。会社によっては、年1回のところもありますし、そもそもボーナス自体がないところもあります。なお、公務員のボーナスは法律で支給が規定されています。
厚生労働省「就労条件総合調査」では5年に1度ボーナスについての調査結果を公表しています。令和4年(2022年)の調査によると、賞与制度がある企業の割合は87.9%。そのうち、賞与を支給した企業が92.8%、賞与を支給しなかった企業が6.5%となっています。
2025年4月にリリースされた大手シンクタンクの資料によると、このところ好調な企業の業績や、人材を確保したいという考えから、今後さらにボーナスを支給する企業は増え、その金額も増えると予想されています。
たとえば、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2025年夏のボーナス見通し」では、2025年夏の民間企業のボーナスは前年比+2.6%の42万5373円で、4年連続で増加が見込まれると増加を予想。ボーナスの支給労働者割合も84.5%で前年比1.3%増、ボーナスが支給される事業所で働く労働者は4350万人で過去最多を更新するとしています。
第一生命経済研究所「2025年・夏のボーナス予測」でも、民間企業の2025年夏のボーナスの1人あたり支給額を前年比+2.3%の42.4万円と予測。堅調な企業業績で利益水準が高く、従業員への還元余力が十分あることに加えて、物価高への問題意識や人手不足感などもあいまってボーナス増・給与増が行われるとしています。
さらに、みずほリサーチ&テクノロジーズ「2025年夏季ボーナス予測」でも2025年夏の民間企業の1人あたりボーナス支給額が前年比+2.4%と、こちらも4年連続の増加を予想。具体的な金額は書かれていないのですが、人手不足の深刻化や過去最高水準の企業の経常利益がボーナスの押し上げ要因となるとしています。
実際、日本経済新聞社がまとめた2025年夏のボーナス調査(中間集計)では、ボーナスの平均支給額が92万4716円で前年比6.29%とのことです。対象が「2024年夏と比較できる146社」ということで大手が中心のデータではありますが、頼もしい金額・伸び率です。
これだけ聞くと、どうやら夏のボーナスは安泰そうに思えるでしょう。実際のところ、いくらボーナスがもらえるか、もらったら何をしようかと楽しみになっている方も多いでしょう。
トランプの影響がボーナスに及ぶ?
ただ、ボーナスの前に大きな不確定要素が立ちはだかりました。2025年1月に就任した米トランプ大統領です。
トランプ大統領は「米国第一主義」の名のもとにさまざまな関税の導入を発表しました。なかでも話題になったのが2025年4月2日にトランプ大統領が発表した関税です。トランプ大統領は、世界の貿易相手国に対して関税を導入すると発表したのです。この関税は二段構えになっていました。具体的には下記内容でした。
- 第1弾…すべての輸入品に一律で10%の関税(ベースライン関税)を課す
- 第2弾…米国との貿易赤字額が大きい国や地域に対して関税率を上乗せする「相互関税」を導入する
相互関税の税率は国や地域により異なり、日本は24%となっています。
これが発表になると、株価は一時的に大きく下落しました。
その後、第2弾の発動はいったん停止となりましたが、日本だけでなく他の国も米国と交渉するなど、前代未聞の情勢になっています。
特に、米国の相互関税に対応して「報復関税」を発表した中国との間では米国が中国に145%、中国が米国に125%もの高い関税を課すことになっており、米中貿易摩擦が激化するという懸念もありました。幸い、米中両国が115%の課税を90日間引き下げることになりましたが、最終的にどうなるかは本稿執筆時点ではわかりません。
では、こうした米トランプ大統領の政策が2025年夏のボーナスに影響を及ぼすかというと、その可能性は少ないのではないかと考えます。
確かにトランプ大統領の政策の動向が、これからの企業の業績に悪影響を与える可能性は十分にあります。しかし、今関税が決まったからといって、すぐにそれが企業業績に反映されるわけではありません。実際、夏のボーナスの金額の算定期間は「去年の10月から今年の3月末まで」などとなっているケースが多いので、夏のボーナスの支給額にはあまり影響がないのではないかと考えられます。
また、ボーナスの動向はトランプ大統領の政策の動向だけで決まるものではありません。すでに触れたように、人材確保や物価高対策などの側面もあります。従業員によりよい仕事をしてほしいと考えるならば、そう簡単に下げたりなくしたりすることもできないのが実情でしょう。
ただ、2025年冬以降のボーナスには影響がでる可能性があります。日本では3月末(年度末)に決算を迎える企業が多くあります。そうした企業の決算発表のなかには、業績が見通せないといって売上高や営業利益などの来期予想を出していないところも多くあります。仮に日米の交渉が不調で、企業の業績が悪化するようなことがあれば、2025年冬以降、中小企業を中心に「米トランプ大統領の影響でボーナスが減った」という企業も出てくることが考えられます。
まずいボーナスの使い方は?
このような状況のなかでボーナスがもらえたら、できるだけ有効活用したいものです。よくさまざまなメディアで「ボーナスの使い道」に関するアンケートや調査が紹介されますが、ほとんどの場合もっとも多いのは「貯蓄」です。「使い道なのか」という感じもしますが、とくに使うあてがないのであれば、将来に備えて貯蓄する人がほとんどのようです。
ただ、いくらお金を貯めなければいけないとはいっても、せっかくのボーナスを全額貯蓄に回したところで、お金はあまり増えません。銀行の預金金利はマイナス金利の解除によって上昇傾向にありますが、大手銀行の普通預金金利で年0.2%。ネット銀行の定期預金などでも年0.5%といったところです。それ以上のスピードで物価が上がってしまえば、お金は目減りすることになります。
貯蓄に続いて、ボーナスの使い道でよく出てくるのが「自分へのご褒美」です。ボーナスが出たら自分へのご褒美として、旅行をしたり、ブランド物を買ったり、新製品の家電を買ったりと、普段行けない旅行や普段買えないものに使いたい気持ちはとてもよくわかります。自分にとって価値があるものにお金を使うこと自体は、人生の充実度が上がるので、決して悪いことではありません。
でも、だからといってボーナスのほぼ全額を自分へのご褒美につぎこむのはNGです。将来への備えもしっかりしつつ、自分へのご褒美にも使うといった具合に、メリハリをつけることが大切です。そうすることで、人生を充実させつつ、お金も貯めたり増やしたりすることができます。
ボーナスの配分は「4:3:2:1」
ボーナスを将来に備えてしっかりとお金を貯めつつ、自分へのご褒美にも使うには、先にボーナスの使い方を決め、お金を仕分けておくことが大切です。おすすめはボーナスを「貯蓄」「自分へのご褒美」「自己投資」「金融資産への投資」の4つに配分することです。具体的には下記の割合で配分します。
貯蓄:自分へのご褒美:自己投資:金融資産への投資=4:3:2:1
ボーナスの4割は定期預金や普通預金など貯蓄に配分し、病気やケガといったもしものときや、夢や目標を実現させるときのお金として利用します。
3割は自分へのご褒美。まったく遊びがないのもつまらないですから、自由に使っていいでしょう。
2割は自己投資として、将来の自分の仕事や生活に役立つことにお金を配分します。
そして1割は金融資産への投資としてNISAやiDeCoを利用するなど、預金よりもお金が増やせそうなところに配分します。
たとえば、ボーナスが50万円もらえたら、20万円は貯蓄、15万円は自分のご褒美、10万円は自己投資、5万円は金融資産への投資になります。
4:3:2:1の比率はあくまでも目安です。たとえば、普段から自己投資のお金はかけているものの、金融資産への投資はしていないというのであれば、自己投資の割合を減らして金融資産への割合を増やすなど、自分の状況に合わせて調整すると良いでしょう。ただし、お金を確実に貯めていくために、貯蓄の割合はボーナスの4~5割確保しておきましょう。
こうして仕分けたボーナスのうち、貯蓄分と金融資産への投資分は、毎月の給与と同じく、先取りで貯蓄用口座に移します。財形貯蓄や銀行の自動積立定期預金を利用している人は、ボーナス月に増額設定もできます。
自分へのご褒美分と自己投資分は、生活費口座に残し、必要に応じて使いましょう。自分へのご褒美分は無理に使うことはないので、余ったら貯蓄や自己投資に回しましょう。
普段の相談でもボーナスの有効な使い方について聞かれる機会が多くありますが、ボーナスは、あらかじめ使い道を決めて、配分したうえで使うのがポイントです。ぜひ、参考にしてみてくださいね。
執筆:高山 一恵(たかやま かずえ)
(株)Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
(株)Money&You取締役。中央大学商学部客員講師。一般社団法人不動産投資コンサルティング協会理事。慶應義塾大学文学部卒業。2005年に女性向けFPオフィス、(株)エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。NHK「日曜討論」「クローズアップ現代」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「マンガと図解 はじめての資産運用」(宝島社)など書籍100冊、累計180万部超。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。
X(旧Twitter):@takayamakazue