選挙で資産は変わるのか?相場の変動に惑わされない“長期投資の判断軸”を考える
選挙のたびに「株価が上がる」「今は買い時」といった情報を目にすると、資産運用も政治の動きに合わせるべきなのかと迷うことがあります。市場の変動が大きい時ほど、何を基準に判断すべきか分からなくなる人は少なくありません。
実際に、選挙は株価に一定の影響を与えることがありますが、その変動の多くは短期的なものです。本質的に重要なのは、目先の値動きではなく、その背景にある政策や経済の流れをどう捉えるかという視点です。
本記事では、選挙と株価の関係を整理しながら、短期的なニュースに左右されず、長期視点で資産形成を考えるための判断軸を解説します。
選挙結果は株価に影響するのか?日本市場との関係をデータで見る
ひとくちに選挙といっても、衆議院議員・参議院議員の選挙、都道府県知事の選挙、市区町村長の選挙、議会の議員の選挙などといろいろありますが、株価を動かすとなると国政選挙、衆議院議員・参議院議員の選挙です。
衆議院議員の任期は4年ですが、衆議院の解散があるとそのたびに総選挙が行われるので、総選挙の間隔は不定期です。ちなみに、衆議院議員が任期満了して選挙になったことは現行憲法下では1度しかありません(1976年の三木内閣)。本稿執筆時点(2026年3月9日)で、直近では2026年2月に衆議院議員選挙が行われています。
参議院議員の任期は6年ですが、3年ごとに半数が改選されるルールです。参議院には解散がないので、3年ごとに定期的に選挙があります。直近では2025年7月に参議院議員選挙が行われています。
●衆議院議員選挙で株価はどうなった?
2000年以降の衆議院議員選挙について、解散日の日経平均株価終値と総選挙翌日の日経平均株価終値がどのくらい増減しているか、騰落率とともにまとめたのが次の表です。
<衆議院議員選挙と日経平均株価(2000年以降)>

参照:総務省公表データおよび日経平均株価データを基に(株)Money&You作成
2000年から2026年まで、衆議院議員選挙は10回行われています。このうち8回が値上がり、2回が値下がりしています。値上がりしているほうが多いので、「選挙は買い」といえるかもしれません。
この10回のなかでもっとも騰落率が高いのは2009年の衆議院議員選挙。麻生首相の内閣支持率が低迷するなかで民主党に支持が集まり自民・公明両党が大敗。政権交代が実現しました。民主党からは鳩山氏が総理大臣に選出され、非自民の政権が誕生しました。
一方、このなかでもっとも騰落率が低いのは2024年の衆議院議員選挙です。
衆議院選挙に先立って行われた自民党の総裁選では積極財政や金融緩和の継続を訴えていた高市氏が優勢だったものの、決選投票で石破氏が総裁に決定。石破氏は利上げに積極的とみられていたこともあり、「石破ショック」とも呼ばれるサプライズ的な値下がりを記録しました。
続く衆議院議員選挙では、政治資金収支報告書に記載すべき資金が記載されていなかったという問題がクローズアップされました。「政治とカネ」の問題を払拭できなかったこともあり、与党は過半数割れとなりました(ここまで名称・役職名などはすべて当時のもの)。
直近の2026年の衆議院議員選挙では、自民党総裁となり女性初の総理大臣となった高市首相が、それまでの自民・公明の連立政権から自民・維新の連立政権に変わったことや、経済政策や安全保障政策などで大きな方針転換があることなどから、「国民の意思を確認するため」に解散を実施。結果は自民党の大勝利で、単独で「憲法改正の発議」ができる3分の2の議席を確保しました。
●参議院議員選挙で株価はどうなった?
2000年以降の参議院議員選挙についても同様にまとめてみました。参議院議員選挙の公示日の日経平均株価の終値と、参議院議員選挙の翌日の日経平均株価の終値を比較しています。
<参議院議員選挙と日経平均株価(2000年以降)>

参照:総務省公表データおよび日経平均株価データを基に(株)Money&You作成
2000年以降の参議院議員選挙は9回ありました。見ると、9回中値上がりはわずか3回です。これでは「選挙は買い」とは言いにくいかもしれません。
このなかでもっとも大きく値上がりしたのは2013年の参議院議員選挙。その前年の2012年に政権を奪還した自民党がその勢いのまま参議院議員選挙でも大勝し、衆議院と参議院の間にあった「ねじれ」が解消しました。
逆にもっとも大きく値下がりしたのは2001年です。内閣支持率が高かった小泉政権が迎えた初の国政選挙で、与党は改選議席を上回り過半数を確保しました。
参議院議員選挙の結果で即座に政権交代するものではありませんが、たとえば2007年の参議院議員選挙は民主党が大勝し、2010年の参議院議員選挙では逆に民主党が過半数割れを喫するなど、大きな動きはあります。
米国大統領選は株価にどう影響するのか?アノマリーの傾向を読み解く
選挙と株価の関係は、日本だけの話ではありません。なかでも、世界最大の経済大国である米国の大統領選挙は、世界中の株式市場に影響を与えます。
米国の大統領選は4年に1度行われていますが、ほぼ1年がかりです。早いところでは1月ごろから予備選や党員集会が行われ、7月から8月にかけて実施される共和党大会・民主党大会で党の指名候補を正式に決定します。そして11月に投票が行われ、大統領が決まります。新大統領が就任するのは、翌年の1月20日です。なお、米国の大統領を務めることができるのは、最大で2期8年間です。3期目はありません。
2024年に行われた米大統領選では当初2期目を目指すバイデン大統領と返り咲きを目指すトランプ氏の一騎打ちの予定でしたが、バイデン大統領の健康問題が浮上。副大統領を務めていたハリス氏との勝負になりましたが、トランプ氏が勝利(名称・役職名などはすべて当時のもの)。2025年1月20日よりトランプ大統領の2期目がスタートしています。
米国では「大統領選挙サイクル」というアノマリーが知られています。大統領の任期の4年間のうち、株価がもっとも上がるのは3年目、大統領選挙の前年だというものです。
ジェフリー・A・ハーシュ著の「アノマリー投資」(パンローリング)には「戦争、不況、弱気相場は大統領の任期の前半に起きるか始まり、反映の時期と強気相場は後半に起きる傾向がある」と書かれています。
2013年に発行された同書では、1833年〜2011年の間、大統領選挙の4年周期で見られるダウ平均の年上昇率を集計すると、
- 大統領選選挙の翌年…86.1%
- 中間選挙の年…187.0%
- 大統領選挙の前年…469.5%
- 大統領選挙の年…254.5%
となっていて、大統領選挙の前年がもっとも値上がりしていることが示されています。大統領選挙の前年は、大統領が再選を意識して経済を活性化させようとするため、選挙前年に景気刺激策が行われやすいことが背景にあると言われています。
一方、評判の悪い政策は大統領の任期の1年目・2年目に行われることが多いかもしれません。トランプ大統領も、就任1年目の2025年はトランプ関税の発動を宣言して世界中が混乱するきっかけを作りました。2026年も、ベネズエラやイランに攻撃するなど、不確実性を増しています。
2001年以降のNYダウの年間騰落率の推移を調べると、次のようになっています。
<NYダウの年間騰落率>

参照:株価データを基にを基に(株)Money&You作成
近年は意外と「大統領選挙の翌年」に大きく値上がりしている様子が見て取れます。
ただ、その勢いは中間選挙の年には続きません。中間選挙の年にマイナスに転じ大統領選挙の前年に大きくプラスになっていることもあります。
特に2003年のブッシュ大統領や2019年のトランプ大統領(いずれも当時)は2期目を目指すタイミングですから、支持を集めるために景気刺激策を行ったとみられる値上がりです。
とはいえ、すべてにあてはまるわけではなさそうです。ブッシュ大統領の第2期やオバマ大統領の第2期のように、「3期目がない」場合にはそこまで上がっていません。特に2015年(-2.23%)は、1939年以降の「大統領選挙の前年」でダウ平均が下落した唯一の年となっています。
選挙による株価変動は長期投資に影響するのか?短期と長期の違いを考える
主に選挙前後の株価の動向を紹介してきましたが、これらは基本的に「短期的な値動き」だといえます。選挙の結果によって株価は確かに動きますが、それはあくまで政権交代や政策変更への期待・不安に反応しているだけであって、長続きしません。選挙結果による株価の変動は、せいぜい数週間しか続きません。
長期的に株価を動かすのは、実際に行われた経済政策の内容や、企業の業績、景気の動向です。選挙はいわばお祭りのようなもので、大切なのはお祭りのあとにきちんと経済政策が行われるか、企業の業績が好転するか、景気がよくなるかといったことです。
その例のひとつが「アベノミクス」です。2012年12月に第2次安倍政権が発足すると、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の「3本の矢」を柱とする経済政策に取り組むと発表。2012年末には9000円程度だった日経平均株価が、2015年に倍の2万円を超えるほどに上昇しました。選挙の後も持続的に値上がりした例だといえそうです。
2024年にはじまった「NISAの拡充」も株価を支える一助となっています。NISAの拡充は政府の「資産所得倍増プラン」の一環として実現したものです。「新NISA」では、「貯蓄から投資へ」を実現するために、それまでどちらかしか使えなかった「旧NISA」の「つみたてNISA」と「一般NISA」をひとつにまとめ、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用できるようにしました。非課税で投資できる金額も大きく増え、生涯にわたって非課税で投資し続けられるようになりました。
金融庁「NISA口座の利用状況調査」(2025年12月末時点速報値)によると、口座数は2825万5664口座、2025年1年間のつみたて投資枠での買付額が約6兆2400億円、成長投資枠での買付額が約12兆5354億円にものぼっています。個人投資家も資産形成のために投資を加速している様子がわかります。
選挙の結果は株価を動かす材料ではありますが、単に選挙によって「株価が上がるか下がるか」という話だけではありません。政治・経済・景気・税制・国際情勢にいたるまで、さまざまなところに影響を及ぼします。
投資で本当に避けるべきリスクは何か?無関心が判断機会を失わせる
2026年の衆議院議員選挙の投票率は56.26%でした。前回の衆議院議員選挙(2024年・53.85%)よりは高くなっています。2025年の参議院議員選挙も58.51%でした。こちらも、前回(2022年・52.05%)より高くなっています。しかし、それでも投票率は依然として60%にも満たないのが現状です。
「どうせ自分の一票では何も変わらない」という声も聞かれますが、そうでしょうか。そうやって選挙に行かない人が増えれば、ある特定の人にだけ利益のある候補者が組織票で当選してしまうかもしれません。そうなれば、自分にとって不利な制度が実施されたり、有利な制度がなくなってしまったりするかもしれません。自分が一票を投じなければ、政治があらぬ方向に行ってしまうリスクがあるのです。
投資にもいろいろなリスクがありますが、「無関心」もまた大きなリスクだといえます。「投資は怖い」「よくわからない」「勉強してから」などといいながら投資をずっと先送りにしていると、その間にインフレで現金の価値は目減りし、お金を減らすことになりかねません。インフレ下では、投資しないこと自体が大きなリスクなのです。
選挙も投資も、一度の選択ですべてが決まるわけではありませんが、積み重ねで変わるものです。大切なのは、情報を集め、考え、行動することです。
投資に関しては、早く始めて長く続けることが大切。目先の株価水準が高かろうが安かろうが、円安・円高だろうが関係ありません。積立・分散投資は、長く続けるほどまとまった資産を堅実に築ける投資方法です。長く続けるには、早く始めることが必要です。
「今は相場が不安定だから、もう少し様子を見てから始めたい」という人もいるかもしれませんが、相場が完全に落ち着くタイミングを待っていたら、いつまでも投資を始められなくなってしまいます。行動しないことには、必要な知識も得られませんので、まず一歩を踏み出すことをおすすめします。
資産形成の判断軸を身につけるための関連記事
選挙や経済の動きは、資産形成を考えるうえで無関係ではありません。だからこそ大切なのは、目先の情報に振り回されず、自分なりの判断軸を持つことです。
その判断軸を育てるためには、制度の活用や分散の考え方など、資産形成の基本を理解しておくことが役立ちます。
次の関連記事では、資産形成を長期視点で考えるためのヒントを紹介しています。
頼藤 太希(よりふじ・たいき)
経済評論家・マネーコンサルタント
Money&You代表取締役。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。ファイナンシャルプランナー三田会代表。慶應義塾大学経済学部卒業後、アフラックにて資産運用リスク管理業務に6年間従事。2015年に現会社を創業し現職へ。
日テレ「カズレーザーと学ぶ。」、フジテレビ「サン!シャイン」、BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」などテレビ・ラジオ出演多数。ニュースメディア「Mocha」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」運営。「はじめての新NISA&iDeCo」(成美堂出版)、「定年後ずっと困らないお金の話」(大和書房)など書籍110冊超、累計190万部。
日本年金学会会員。ファイナンシャルプランナー(CFP®)。1級FP技能士。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。宅地建物取引士。日本アクチュアリー会研究会員。
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