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「不動産投資を始めたきっかけ」 都心マンション購入から学んだ利回りと分散投資の本質

社会人として不動産業界に飛び込んだ筆者が、憧れから始めた都心マンション投資。初めての購入体験を通じて、利回りだけにとらわれない「量より質」の考え方や、時間と場所を分散させる投資戦略を学びました。

本コラムでは、実体験を交えながら“不動産投資の入口”と“長期的に資産を守るための視点”について解説します。

不動産投資へのあこがれの気持ちの芽生えについて

私は学生生活から大京(当時は大京観光)という業界最大手の不動産会社に入り、暖かい先輩・仲間たちに囲まれながら日々とても厳しい営業生活を送っていました。当時、車が欲しいとか自宅が欲しいとかもちろんそういう願望もありました。実際にお客様に投資用として東京都心のライオンズマンションを販売しているうちに、契約をする喜びと共に「自分自身もいつか都心エリアに資産を持ちたい」というぼんやりとした希望が徐々に芽生えてきた事が記憶に残ります。

都心の超一等地に新築のマンションを持つという事はまさに憧れの対象でした。

憧れから購入へのきっかけとは

当時まだ若干20代後半の私でしたが、一定の勤続年数もクリアし、給与もその歳の割にはそこそこ頂いていましたので、ローンを組める力がいつの間にか形成されました。

ある日マスコミ関係のお客様と交渉している最中、お客様から私の背中を大きく動かしてくれる助言を頂きました。

「野中さんの説明は十分に理解できましたし、不動産投資の魅力や注意点についても納得しました。ただ、私としてはもし野中さんが既にご自身が不動産投資をしていれば、より説得力が増したと思いますよ」と言われた事です。

確かに大京観光という会社は素晴らしい会社ですと言いながら自社物件を購入しないで他社の物件を買ったり、自分が全く買わないのに投資用として勧めるだけでは説得力に欠けるなと思いました。

もともと憧れていた不動産投資で購入できる条件もクリアしていましたので、思わず「分かりました。私も同じマンションを購入しますので、お客様もぜひ購入を検討して下さい」と衝動的に言ってしまいました。不思議と後悔の気持ちは全くなく、むしろすっきりとした心境になりました。それが当時私が初めて投資用マンションを購入した都心三区の一つである中央区のライオンズマンションでした。

自分の時間を有効に使える事に感謝

当時の私はとにかく仕事がハードな会社に在籍していましたので、プライベートな時間が極端に少ない生活を送っていました。そのように仕事に忙殺される中でも、マンション投資の管理はすべて代行会社がやってくれましたので安心できた訳です。

当時から私の先輩・仲間の中では株の投資をしている方もいらっしゃいましたが、株価の乱高下によって仕事が手につかないという方も実際に垣間見てきました。

不動産投資をしてよかった事の第一番目

まず物事をグローバルな視点で見る事が養われた事です。当時の私は顧客の方の中に大学の経済学部の教授や外資系企業・金融機関・商社などの管理職のお客様が一気に増えて、お話をする機会がとても増えました。一流のプロの方々との交流の中で、国際的な不動産市況、経済動向など多くを学ぶ事ができました。

当時はSNS等はありませんでしたので、購読する新聞は日本経済新聞、日経金融新聞などから多岐に渡る情報をインプットしました。また不動産投資には確定申告が必要ですので、不動産税制や損益通算、税金についてもかなり勉強できました。

読者の皆様も経験があると思いますが、小さい頃ラジオほか機械を分解し、どのような仕組みでその機能が成り立つのかなどに興味関心を持ったご経験も多々あったと思います。何事も一旦好きになった事、好きになった物を解析してみたいという気持ちが芽生える訳です。実際自分がもらっている源泉徴収書を分析し、どういう仕組みで社会保険料や生命保険料が天引きされているのか、また自分自身の不動産の確定申告などを通じて不動産税制についても多くの知識を吸収する事ができました。

例えば減価償却費や住宅ローンの利息と元金の割合の変化などを理解すればする程、その奥深さと面白さを体感できた訳です。

一番良かった事は

不動産投資をして一番良かった事は「現在の時間を楽しむ事ができる!」という事でした。当時は積立式の生命保険や財形貯蓄や社内積立預金など、とにかく老後のために積み立てしようという風潮が現在の世の中同様漂っていました。しかし貯金ばかりしても毎日が家と会社の往復では思い出すら残らない訳です。

私のやり方としては「老後の資産形成はマンションに任せて現在を楽しむ」という生き方です。若い頃はさほど貯金もできませんでしたが、その分いろんな方と交流したり、毎年のように海外旅行に行ったり、様々な経験を積む事ができました。

多極分散投資とは

その後、徐々に所有物件を増やしていきました。よく「アパートやマンションをいっぱい持っている」とかそういう話も耳にしますが、私は不動産投資はそこそこに抑えて多極分散投資を心がけました。多極分散投資とは不動産に限らず他の資産にも投資し、投資する時期も分散する訳です。

不動産業界には一定の法則があり、上がったり下がったり、安定期があったり、長期的にはその繰り返しとなります。ですのである一定のキャピタルゲインが発生した時に一旦利益確定するという決断力も大切です。

例えば東京・名古屋・大阪・福岡の不動産市場はタイムラグを置きながら、そこ価格形成が変化していきます。東京が上がったら出遅れている大阪に投資し、大阪が上がったらさらに出遅れている福岡に投資をする。そのように時間と場所を分散させるのも一つの投資手法と言えます。私はこれは実践してきました。

高い利回りを求めなくて良かった事

筆者が講演させて頂いた不動産投資セミナーに参加するお客さまの中には、とにかく投資利回り最優先という方も散見されました。投資利回りが高い物件が必ずしも優良とは言えないケースもある事を認識する事が大切です。極端な事を言うと銀座の2%を選ぶか、地方都市の10%を選ぶかという選択肢です。

実際にある例ですが、地方都市で20㎡のワンルームマンションが1部屋300万円で家賃が2万5,000円ですと、年間表面利回りが10%となります。地方都市でも古くて狭くても家賃が安くても、エレベーターが付いていてRC構造であれば管理コストは月に優に1万円を超えます。つまり家賃収入2万5,000円に対して管理コストが1万円以上かかり、そのバランスが取れておらずまさに管理コスト難民化する物件を多々見てきました。

長期に渡って賃料が上がる物件、一戸当たりの家賃収入が7万円以上は欲しい所です。

目先の投資利回りに目がくらみ、その戸数をどんどん増やしたらどうなるか想像がつくと思います。実際最近の報道でも高い投資利回りを掲げたファンド会社が経営難に陥り多くの投資家が損害を被ったという事案が発生しています。不動産投資においては「量より質」、さらに「安全」に重点を置き、自分自身の身の丈に合った以上の投資はしないというスタンスも重要と考えます。

以上述べた事はあくまでも筆者の経験談ですので、必ずしも読者の皆様に当てはまるとは限りません。参考になる所があれば今後の皆様の不動産投資に寄与できれば幸いです。

野中 清志(のなか きよし)
住宅コンサルタント

マンションデベロッパーを経て、2003年に株式会社オフィス野中を設立。
首都圏・関西および全国でマンション購入に関する講演多数。内容は居住用から資産運用向けセミナーなど、年間100本近く講演。

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